8.精神的自由1−内心の自由 8−1 思想・良心の自由       19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。   *思想と良心の関係をいかに解すべきか。    →両者を厳格に区別する必要はなく、「良心」は、思想のうち倫理性の強いものを意味するにすぎないとする。   *沈黙の自由は何条で保障されるか。    →思想の沈黙の場合は19条で絶対的に保障、事実の沈黙の場合は21条で保障する。   *思想・良心の自由の範囲    →信条説(芦部):信仰に準ずる世界観・人生観・主義・思想などの個人の人格的な内面的精神作用に限定して捕え、 (限定説) 道徳的な反省とか誠実さというような事物の是非弁別の判断はそれには含まれない。 内心説(浦部):広く倫理的判断ないし事物に関する是非弁別の内心的作用を、19条の思想・良心に含めて理解     (広義説) する。事実の是非善悪の判断を外部に表現させることも思想良心の自由を侵すことになる。   *謝罪広告の強制(民法723条)は「思想良心の自由」を侵害するか。    →限定説‥侵害しない。 広義説‥侵害する。 8−2 信教の自由       20条  信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、または政治上の 権力を行使してはならない。    何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。    国およびその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。   89条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織もしくは団体の使用、便益もしくは維持のため、または公の支配に属       しない慈善、教育もしくは博愛の事業に対し、これを支出し、またはその利用に供してはならない。 1.信教の自由  (1)内容  内心における信仰の自由  宗教的行為の自由  宗教的結社の自由  (2)宗教の意味   *「宗教」とは。    →一元説(通説):信教の自由については広く捕えるべきであり、憲法にいう宗教とは「超自然的・超人間的本質の  存在を確信し、畏敬崇拝する信条と行為」をいう。 二元説(芦部・佐藤幸):20条1項前段及び2項にいう信教と宗教は通説と同様の意味に解すべきだが、3項の      宗教は「なんらかの固有の教義体系を備えた組織的背景を持つもの」の意味に解するな ど狭い意味で捉えるべきである。  (3)限界→内心における信仰の自由は絶対的に保障される。しかし外部的行為を伴うような場合には絶対無制限ではない。  (4)裁判で争う場合の問題点→宗教上の争いは法律上の争訟に当たらないのではないかという問題。→憲法訴訟 2.政教分離の原則  (1)政教分離の原則の趣旨  政教分離…国家の非宗教性・宗教に対する中立性   *政教分離の原則が求められる根拠    → 狭義の信教の自由の保障…国家と宗教が結びつくと、少数者の信教の自由が侵害されることが往々にしてある。  政府を破壊から救うこと…国家が宗教と結びつくと、国家の専制化ないし非民主化を招く。  宗教をして堕落から免れしめること…宗教が国家によって優遇されるときは宗教自体も堕落する結果になる。  (2)政教分離の法的性格   *政教分離原則の法的性格をいかに解するか。    →制度的保障説(通判):政教分離規定は、制度的保障である。   r.憲法は信教の自由の保障を確保・強化するための手段として政教分離という制度そのものを保障した。   c.制度の核心部分を侵害しない限りは、ある程度国家と宗教が関わりを持つことを許してしまう危険がある。 客観的制度説(佐藤幸):政教分離原則は、個人の信教の自由の保障を完全なものにすることに向けられた制度で      あり、その内容は憲法上明示されており、その明示されたところにしたがって、公権力 を厳格に拘束する。 人権説(浦部):政教分離原則を人権保障条項と解する。 c.信教の自由とは異なった独自の人権性はどこにあるのか等具体的内容が不明確である。   20条3項は国家に対する禁止命題であり、人権規定と解するのは文言上無理である。  (3)政教分離の限界   *国家と宗教との関り合いは一切排除されるか。    →通説)福祉国家理念からするとまったく許さないという趣旨ではない。   *国家と宗教の結びつきはどの程度まで許されるか。    →イ)完全分離説:習俗的行為であれば許される。             具体的には 行為の主催者が宗教家か否か、                      行為の順序作法が                    宗教界で定められたものか否か、                       行為が一般人に違和感なく受け入れられる程度に普遍性を有するか否か、で判断する。 ロ)レモンテスト(アメリカの判例):   国の行為が世俗的【目的】を持たないものかどうか。   その行為の主要な【効果】が宗教を振興し又は抑圧するものかどうか。   その行為が、宗教との過度の【関り合い】を促すものかどうか。  のうち1つでも該当すれば違憲となる。 ハ)目的効果基準(判例):   当該行為の目的が宗教的意義を持つかどうか。   その効果が宗教に対する援助・助長・促進または圧迫・干渉等になるような行為かどうか。   双方に該当しなければ違憲とならない。  (4)裁判上の争い方   政教分離違反→原則:裁判で争えない。(制度的保障説・制度説)  例外: 個人が公権力に強制された場合→人権侵害となる。  住民訴訟→法律上の争訟の例外として 8−3 学問の自由       23条 学問の自由は、これを保障する。 1.学問の自由の内容    学問研究活動の自由    研究成果発表の自由    教授の自由    *初等中等教育機関において教育の自由が認められるか。A →通説)初等中等教育機関においても教育の自由は認められる。 r.教育は生徒等の心身の発達に応じて行なわれる学問的実践であり、学問と本質的に不可分一体のもの    である。 2.大学の自治  (1)意義   大学の自治…大学における研究教育の自由を十分に保障するために、大学の内部行政に関しては大学の自主的な決定に  任せ、大学内の問題に外部勢力が干渉することを排除しようとするもの。制度的保障として認められる。  (2)内容と限界   …人事の自治、施設の管理の自治、学生の管理の自治    1)対警察権力との関係 警察権の行使は大学といえども治外法権ではないから、これを拒むことはできない。大学側の許諾または例外があ     ることを要する。但し、例外として緊急の場合、令状による場合は許諾を必要としない。    2)公安警備情報活動との関係  警備活動のために警察官が大学の了解なしに学内に立ち入ることは原則として許されない。     *学生は大学の自治の主体と位置づけることはできるか。      →判例)学生自治否定説:もっぱら営造物の利用者とする。    r.学問研究及び教育に必要な事項を判断する経験・資格・能力は教育を受ける学生にはなく、また、数年        間大学に在籍するだけの学生は、その判定の責任主体性を欠く。     構成員説(芦部、佐藤幸):学生も教授の指導の下に研究に従事する存在であるから大学の自治の権利を有する。